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「確かに火浦は親友なんて口はばったいものじゃないが、大学入学以来の悪友だよ。お互い生まれも性格も目指すものもまるで違うが、何故か妙に気の合うヤツだ」
そうなのだ。
「表裏」のある日向にとって実は火浦という人間は、日向がその乾いた心を癒やすことの出来る真璃亜以外、唯一無二、希有の存在と言ってよい。
「真璃亜さえ良ければ、モデルの件も前向きに検討してやって欲しい」
ようやく機嫌を直した日向に心底ホッとしつつも真璃亜は、ふるふると横に首を振った。
「私……そういうの、苦手で……」
「そうだな。じゃあ、この話はこれでおしまい。早く、母上に送る写真を撮りに行こう」
「はい!」
真璃亜は花がほころぶように微笑う。
かすみ草のような控え目さを兼ね備えながら、なのに大輪の薔薇の花を想わせるその笑顔は、齢十八という若さの故か。
いや、肩先で切り揃えた黒髪を白いレースで縁取られている翡翠色のベルベットのカチューシャで纏めている真璃亜は、その零れ落ちんばかりに大きなすみれ色の瞳と濡れ羽色した長い睫、愛らしい上品な紅の口元など、長所を挙げればきりがない。
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