月光

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 あのアソシアでの忘れられない初めての夜から、どのくらい経てばこの情景にも慣れるのだろうか。  今の真璃亜にはまだ見当がつかない。 「ん……」  こうやって口唇を塞がれ、甘い吐息を発して、自分が自分ではなくなっていく。  声ともつかぬ声が漏れそうになる。  そんな自分は、やはり自分ではないようだ。  服の上からでも感じるのに、素肌を晒せばもう、広い大海に漂う小舟のように、行き着く岸は遙か遠い。  日向は意地悪だから、なかなか許してはくれないから。  それでも今夜も肌をあわせる。  多分、今宵の月が東の空へと隠れるまで。  ああ、月の光がとても。  綺麗……。  窓のカーテンが微かに開いていて、三日月が見える。  暗い部屋の中、月光が差し込む。  不意に真璃亜の脳裏に、ドビュッシーの「月の光」の旋律が浮かんだ。  ピアノが弾きたい───────  こんな時でさえ、そんなことを思う自分は不思議、と真璃亜は思う。  躰は過敏に日向の動きに反応するのに、意識だけがふとした瞬間にトリップする。  
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