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「そうです! 先輩は多忙な高等部最終学年で、生徒会長のお仕事もなさり、しかも栄えある院内音楽コンクールご出場の身」
「何もライバルのこの娘の面倒を、そこまでしてご覧にならなくても」
小野が困惑した面持ちで、俺と彼女たちのやりとりを見守っている中、俺はいつもの柔和な笑みで応えた。
「心配してくれて有難う。でも、僕は大丈夫。それよりやはり生徒会長として、内進者でもない特別な新入生である小野さんに心配りをするのは、当たり前のことだと思うんだ。だから、君たちの気持ちは有難いが、無用な気遣いだよ」
取り巻き連中は一瞬顔を見合わせたが、今度は口々に俺を称え始めた。
「さすがは日向先輩」
「そうですわね。日向先輩が一年生のこの娘ごときに負けるなんてこと、有り得ないわ」
「勝つとか負けるとかそういうことは抜きにして、いずれにせよコンクールには全力を尽くす。だから安心していてほしい。ああ、それから。小野さんのことは君たちにもよろしく頼むよ。この通り、か細い可愛らしい子だからね。僕は心配なんだ」
俺はにっこりと微笑んだ。二重の笑みで。
俺の思惑通り、噂は更なる噂を呼んだ。
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