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嘘つき総理の国
「税を上げましょう」
秘書の村中はそう呟いた。
「だが理由もなく税など上げられるか? 」
「社会保障に使うとのたまえばいいのです。我が党に協力している企業を救うためです。嘘も方便というもの」
総理はうむと頷いてみせた。国民はテレビの報道を信用する。表向きだけ美辞麗句を繋げばいいのだ。
「そうしよう。これも国のためだ。大体僅かな増税しても国民にはそれほど影響はないだろう」
総理が翌日に社会保障のために増税すると宣言し、税はじわりじわりと上がり続けた。総理が三期目の総理を勤め始めたとき、秘書の前で大きくため息を吐いた。
「どうして人口は減るのだ? どうして出生率は下がるのだ? 大企業を優先すれば、国は豊かになるのではないか? 子供の貧困を叫ぶ者もいる。どうすればいいか? 」
「総理に何の落ち度はありません。未来の子供たちのためにさらなる増税をしましょう。そして企業からの法人税をもっと下げましょう。大企業が人を請け負うのです。協力者を優先すべきです。どうせ国民はテレビの言葉を信じますから」
「うむ。君は嘘も方便と言っていたな。そうしよう」
総理はルールを捻じ曲げて六期目を勤め始めた矢先、秘書の前でため息を吐いた。
「失業率の増加が止まらない。貧困で餓死者も増えてきた。今度はどんな嘘で国民を騙せばいい? 」
「東洋の島国は、その当時の総理の嘘の塗り重ねで滅びました。今では我が国の属国になりました。さぁ皆さん、この歴史から何を学びますか? 」
子供たちは次々と手をあげる。
「はい。ではアレン」
「はい! 嘘は身も国も滅ぼすということです! 」
「よろしい。君がもし政治家になるならば、国民を思い誠実な政治をするんだよ。嘘つきの政治家は、この東洋の島国の政治家のように全て滅ぼしてしまうからね。いいね、皆さん? 」
「はーーい! 」
嘘つきの総理は国を一つ滅ぼし、その国の民族を全て滅ぼした。嘘の代償は、一つの歴史を終わらせてしまった。国を滅ぼしたあと、その総理が何をしていたか知る者はいない。
了
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