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「近づくなって言いませんでした?」
「隣に立ってんのに無茶言うな! お前ってほんとおれのこと嫌いすぎじゃない?!」
「…………」
直人の抗議を聞いた静は、なぜかさらに力を加えてきた。
「痛いいたい痛いってば!」
ただでさえ長身の静は人目を引くのに、こんな風にぎゃあぎゃあ騒いでいると、余計に目立つ。
高校に近づくにつれ、ちらほら同じ制服姿の生徒が増えてきた。自意識過剰かも知れないけど、何となく視線を感じて恥ずかしい。
「もーいい! 遠野のばか!」
意地悪な指を振り払って、背を向ける。ちょうどバスが停まったところだった。
「あ、先輩、」
珍しく静の焦った声が聞こえた気がしたけど、振り向いてなんてやらない。急いでICカードを通して乗降口を通り抜ける。
そっぽを向いて歩いていたら、しばらくしてから静もバスを降りたようだった。
カバンを担いだ静の肩が珍しく落ちていた気がして、いい気味だと舌を出した。
***
直人の通う緑ヶ丘高校は、今日から四日間の期末テスト週間に入る。
初日である今日は二科目しかなく、ホームルームが終わっても、まだ昼前だった。
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