七月九日 火曜日

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「近づくなって言いませんでした?」 「隣に立ってんのに無茶言うな! お前ってほんとおれのこと嫌いすぎじゃない?!」 「…………」  直人の抗議を聞いた静は、なぜかさらに力を加えてきた。 「痛いいたい痛いってば!」  ただでさえ長身の静は人目を引くのに、こんな風にぎゃあぎゃあ騒いでいると、余計に目立つ。  高校に近づくにつれ、ちらほら同じ制服姿の生徒が増えてきた。自意識過剰かも知れないけど、何となく視線を感じて恥ずかしい。 「もーいい! 遠野のばか!」  意地悪な指を振り払って、背を向ける。ちょうどバスが停まったところだった。 「あ、先輩、」  珍しく静の焦った声が聞こえた気がしたけど、振り向いてなんてやらない。急いでICカードを通して乗降口を通り抜ける。  そっぽを向いて歩いていたら、しばらくしてから静もバスを降りたようだった。  カバンを担いだ静の肩が珍しく落ちていた気がして、いい気味だと舌を出した。 ***  直人の通う緑ヶ丘高校は、今日から四日間の期末テスト週間に入る。  初日である今日は二科目しかなく、ホームルームが終わっても、まだ昼前だった。
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