七月十一日 木曜日

33/54
前へ
/165ページ
次へ
「ウィルっていうのが、その猫だっけ? えっと、その、ウィルになるのって、どのくらいの長さなの?」  これは、本当にそう疑問に思って尋ねた、というよりは、ただ話をつなげるためだけの質問だろう。友人のやさしさに感謝しつつ、ちょっと考えてみる。 「んー……時計とか見たわけじゃないから、確かではないけど、そんなに長くないと思う。一分とかそのくらい。でもあんまよくわかんない。猫になっている間って、身体はやたら重く感じるし、頭も上手く働かないんだよ」  それまで無言でトレーの上の食べ物を咀嚼していた静が、ここにきて初めて興味を引かれたように身を乗り出してきた。 「そうなんですか?」 「あれ、言ってなかったっけ? それに、上手く言えないんだけど、何かすごーく嫌な予感がするんだ」  どうしてこんなに不安なんだろう。自分でも理由は分からない。  ただ、足元がくずれていくような焦燥感は、時間が経つほど強くなっている。  汗をかき始めた紙コップをじっと見つめていると、再び静が口を開いた。 「今朝も思ったんですけど、どうして、二回目にウィルになった後、やっぱり夢だったかも、って思ったんですか?」
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

210人が本棚に入れています
本棚に追加