七月十一日 木曜日

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「えぇと、だから、おれがやっぱり夢かも、って思った理由だったよな」  慌てて自分のトレーを手前に引き寄せて、脱線しまくっていた話を戻す。優が呆れた顔でシェイクをすすっているけど、そこは見ないふり。 「ウィルになっている間、二回とも遠野に会っただろ。でも、そのときのことを遠野に話しても、そんなことしてない、って言うから。二回とも言われるなら、やっぱりウィルになったのはおれの夢? っていうか、妄想? だったのかな、って……」  我ながらちょっと無理のある返答だったかな、とは思ったがとにかく言い切った。すると途中から完全に傍観者になっていた優が、空になった包み紙をきれいに折りたたみつつ、首をかしげた。 「ねぇ、直人。そういえば直人が猫になっている間、遠野に会ったってことしか僕、聞いてない。具体的には何してたの?」  直球で困った質問がきた。  でも、みんなに改まって説明するとなると、避けられない質問かな、とは思っていた。  ウーロン茶で渇いたのどを湿らせて、あらかじめ用意をしてあった回答を舌に乗せる。 「昨日は、その、……遠野はおれの部屋で、猫になったおれを膝に乗せてた」 「それだけ?」
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