七月十一日 木曜日

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 真っ直ぐに目を見て言われると、不覚にもちょっと胸がときめいてしまう。普段冷たくあしらわれてばかりいるせいか、ほんの少しやさしくされただけでうれしくて仕方ない。 「昨日まで全然本気にしてくれなかったくせに。なんで急に信じてくれる気になったんだ?」  悔しくて、ちょっと拗ねた声になってしまったが、その理由にまではさすがの静も思い至らないだろう。対面に座る後輩は、ごく真面目な顔で話し始めた。 「もともと俺は橋本先輩が嘘をついているとは思っていません。でも常識的に考えて、寝ている間に猫になった、って言われて信じますか? 夢を見たって思う方が自然でしょう」  ここで静は、篠塚と優に順番に視線を向けた。ふたりとも頷いているのを確認し、再び直人と目を合わせる。 「でもそれが、二日も続けて起こったのなら話は変わってきます。仮に夢だったとしても、そもそも同じシチュエーションの夢を二日続けてみること自体、あんまりあることじゃない。それに、ウィルになっている間、橋本先輩がそれほど強い不安感を感じているのなら、なおさら心配です」  理路整然と説明されて、なるほどなー、と納得してしまう。
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