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「直人、部室で勉強してく?」
放課後、ガタガタと騒々しく席を立つ生徒の間をすり抜けて、同じ部活の田辺優(タナベユウ)が声をかけてきた。
優はバスケ部の中では珍しく直人より小柄な、直人の友人だ。やさしげな容姿でにっこり笑いかけられると、テストの間に疲労した脳が癒されていく。
「うん、行く」
かばんを担いで立ち上がり、ふたり連れ立って部室棟へ向かう。
部室を覗くと、すでに何人かの生徒が来ていた。
「お疲れさまです」
「おー」
先輩や後輩に適当に挨拶しながら、空いている席に座る。
直人の所属するバスケ部は仲が良い。部活のないテスト週間の間も、自然と部室に部員が集まる。
気の置けない仲間と和気藹々と勉強するのは楽しいし、去年改装したばかりの部室はみんなの自慢でもあった。ただし一つだけ難点があって、それは部室にエアコンがないことだ。
窓もドアも大きく開け放たれ、一機しかない扇風機がフル稼働しているが、座っているだけでじっとりと汗ばんでくる。
「……暑い」
「まぁ、七月だし、しょうがないよ。ほら、明日直人の苦手な数学あるよ。夏休みの間、補講受けたくないでしょ?」
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