七月十一日 木曜日

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「まぁ、でも、魔女の猫なら……」 「入れ替わりの魔法とか使える、とか……」  自分たちで言いつつも、これは苦しい理論だなぁと思う。  これまで八年間、何にもなかったのに、急に入れ替わりの魔法なんて使うか? だいたい、寝てる間に入れ替わって、なんの意味がある。  しかし、どんなにバカバカしい話だとしても、他に何の手がかりもない以上、それにすがるしかない。 「一応、確認してみます」 そういって携帯電話を取り出した静に、直人は驚いて声をあげた。 「え、お前あのおばさんの連絡先知ってるの?!」 「知るわけないでしょうが」  冷え切った声で切り返されて、ぐっと言葉につまる。自分だって魔女だなんてメルヘンなこと言いだしたくせに。 「だいたい時差のこと考えてください。向こうは今明け方です」  いつも通り、常識人ぶった静にバカにされると言い返せないのが悔しい。ウーロン茶をストローでぐるぐると回しながらこっそり拗ねていると、横から優が背中を叩いてくれた。
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