七月十一日 木曜日

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 ほんとに、何でこんなやつを好きになっちゃったんだろう。意地悪で冷たくて、顔と身体だけは文句なくイイけど、自分よりずっと頭が切れて甲斐性もある後輩なんて、同じ男として好きになってもつらいばっかりじゃないか。 「母に連絡先を訊いてみます。あのひとなら電話番号ぐらい知っているかもしれない。最悪住所なら俺でも調べれば分かりますから、後で知らせます」  自分の趣味の悪さに胸中で打ちひしがれている間に、静は連絡を終えたようだった。制服のポケットに携帯を戻して立ち上がる。  何となくだけど、今後の方針がまとまったみたいだ。 「じゃあ、とりあえず今は遠野の母さんからの返信待ちかな」 「わらにも縋る、って感じだけどね」  それでも何もしないよりも遥かに前進した気分だし、なにより半信半疑とは言え、相談にのってくれる仲間がいるというのは心強い。  みんなに何度もお礼を言ってから、その日は解散した。  帰宅してから、エアコンの効いたダイニングで勉強した。猫になってしまう、という怪奇現象に巻き込まれるようになってから、こんなに集中して勉強出来たのは初めてかもしれない。
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