七月十一日 木曜日

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 夕飯を終え、ちょっとごろごろしてから自室に戻る。時計を見ると、午後八時近かった。  それなのに、静が来ない。  いや、普通は来ないのが当たり前なんだけど。ここ数ヶ月当たり前みたいに入り浸っていたから、急に来なくなると、なんだか調子が狂う。  その代わりみたいに、隣家の愛猫であるウィルが堂々と直人のベッドに寝転んでいた。飼い主によく似た厚かましさに、ちょっと笑ってしまう。 「なぁ、ウィル。お前のご主人さまって魔女だったの?」  話しかけても当然ウィルは何も答えない。平和な寝顔と、呼吸に合わせて浮き沈みするふわふわのお腹。どこからどう見たって、ただの猫だ。 「お前、魔法が使えるの?」  重ねて問いかけると、眠たげな茶トラはうっすらと片目を開けてこちらをちらりと見た。明るいヘーゼル色の瞳がきらりと輝く。シーツの上に前足をそろえて立ち上がったかと思うと、次の瞬間、音も立てずに窓から外へ飛び出して行った。  風のように立ち去ったウィルを見送って、揺れるカーテンをぼんやり眺める。ひらひらとはためく濃紺に、気付けば引き寄せられるように手を伸ばしていた。
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