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頷くと、話は終わった、とばかりに静は窓ガラスに手をかけた。今にも閉めてしまいそうだ。
やっぱり、避けられてるのだろうか。また、あの中学生の頃みたいに、理由も教えてもらえないまま、会話がなくなる?
「遠野!」
焦って、思ったよりも大きな声が出てしまった。眉を顰めた静は、はっきりと迷惑そうな顔をした。
さすがにここまで拒絶されると、真っ向から向き合うのは怖い。だけど、このまま一方的に疎遠にされてしまうのは、いやだ。
整った顔がこれ以上歪むのを、なるべく視界に入れないようにして、直人は一息で吐き出した。
「今日はこっちこないの?」
何気なさを装って、窓枠に腕をついて笑いかける。静は少し迷ってから、窓の桟にかけていた手を下ろしてくれた。一応、まだ会話を続ける気があるのだと知って、ほっとする。
だけど、彼の口から出た回答はにべもなかった。
「行きません」
静はいつも、直人の意見を聞かずに何でも勝手に決めてしまう。
「何で」
それが悔しくて、即座に切り返したら、彼は一瞬目を見張った。怒ろうとしたのか、笑おうとしたのか。迷うように動いた唇は、結局ゆるく弧を描き、苦笑に変わる。
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