七月十一日 木曜日

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「でも何で急にあかりが出てくるわけ?」 「沢村って、よくポニーテールしてたじゃないですか」 「そうだっけ?」  ひょっとして以前適当に言った“理想の彼女像”の話だろうか。でも、あんなの、ものの弾みで出た言葉だった。恋愛というものに憧れていた頃の、実のない夢物語。 「あいつともキスとかしたんですか?」 「ば、ばか。してない! てか、そんなこと訊くなよ恥ずかしい」  これ以上キスの話なんかしないで欲しい。もともと直人はあんまり恋バナとかするタイプではないし、まして片思いしている相手と話したい内容じゃない。頬が止めようもなく熱くなってしまうのが自分でも分かる。 「ていうか、お前こそどうなんだよ。二日前に告白されてたじゃん」  強引に話の矛先を向けると、静はあからさまにむっとした顔をした。 「そんなことありませんでした、って……いい加減、しつこいですね。俺のこと好きな男なんていませんよ」 「んなわけねーだろ」 「いたとしても、俺には関係ない」
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