七月十一日 木曜日

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 くどくど重ねて言われ、静も鬱憤が溜まっているのかもしれないが、こんな言い方されれば直人だって面白くない。だって、直人は静のことが好きなのだ。関係ない、なんて切り捨てられると腹が立ってくる。 「何で」  半ばけんか腰に問いかけると、静は薄い唇を噛んで目を閉じた。黒々とした瞳が見えなくなると、余計に彼が何を考えているのか分からなくなる。  明るい室内灯を背後に佇む静の表情は、逆光になっていてよく見えない。 「好きなひとが、いるから」  最初、静が何て言ったのか理解出来なかった。  徐々に言葉の意味が脳を浸透していくにつれ、感情が麻痺していく。  その代わりみたいに、涙が出てきてしまった。哀しいからじゃない。ただ、あんまりにも驚いて涙腺がおかしくなってしまったみたいだ。  あっという間に、大粒の涙が零れ落ちそうになる。目線を戻した静は、暗がりできらめく潤んだ直人の瞳を見止め、ぎょっとした顔をした。 「直人、」 「あ、いや、違う。ただびっくりして」
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