七月九日 火曜日

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 優が苦笑いしながら取り成してくれたが、この暑さの中苦手な単元に取り組むやる気が出ない。 「夏休み入る前に彼女欲しい……」  机にだらしなく顔をつけてぼやくと、たまたま横に座っていた後輩の篠塚(シノヅカ)になぜか大笑いされてしまった。失礼なやつだ。  篠塚は静と同じクラスで、口数の少ない静とは正反対で調子が良い。一見性格が合わなそうだが、長身のふたりはバスケのプレーでは息が合って、入部したばかりなのに即戦力として活躍していた。 「ハハッ、またまた先輩ったら」  まるで端から冗談だと決め付けたような言い草に、怪訝に思って顔を上げる。 「何でだよ、普通に欲しいに決まってんじゃん。夏休みだよ? 海にプールに花火大会! 彼女いた方が楽しいイベントいっぱいあるし」  身を乗り出してごく平均的な男子高生の主張を力説する直人を前に、なぜか篠塚は困惑気味だ。  持っていた教科書で直人をけん制しながら、口元を引きつらせている。 「え、マジで言ってるんですか?」 「マジだよ大マジ。どっかにいい子いたら紹介して」 「えぇぇえぇええええ……」 「え? え?」
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