七月十一日 木曜日

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 両手を窓枠について、身を乗り出してきた幼馴染みを手振りで牽制する。自分でも自分の気持ちが分からないのに、この流れで静にあれこれ言われるのは避けたい。 「おまえ、好きな子、いるの?」 「……あぁ」  前から薄っすら静に好きな相手がいるような気はしていた。静の語る好きなタイプの話はやけに具体的だったし、妙に情感がこもっていて、聞いているだけで胸がざわつくほどだった。 「おれ、もう寝る。おやすみ」  目を伏せて窓に手をかけた直人の耳に、いやにはっきりと静の声が飛び込んできた。 「直人は俺に好きな人がいたら、泣くんだ?」 「っ!」  その声音がやけに弾んでいるように聞こえて、癪に障る。もう返事も出来なくて、勢いでそのまま窓を閉めてしまった。ついでカーテンも引こうとしたが、コンコン、と響いた軽いノックの音に、しぶしぶ顔を上げた。 『おやすみ』  ガラス一枚隔てた向こうで、そう静の口が動いたのが分かった。かろうじて頷いてから、カーテンを閉める。  濃紺の隙間から見えた幼馴染みの顔は、悔しいことになぜかひどく嬉しそうに見えた。 直人、またもや猫になる
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