七月十一日 木曜日

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 寝る前のやりとりを思い出してみるも、これといって心当たりがない。むしろ、別れ際の静は、いつもより機嫌が良さそうなくらいだった。  目を白黒させながら必死で考える茶トラの直人をやさしく抱き直し、静はため息を吐く。腕の中から見上げると、寂しそうな、どこか切ない瞳をしていた。  目を閉じて、ゆっくりと口を開く。  しかしその唇が言葉をつむぐ前に、唐突に直人の視界は真っ黒に塗りつぶされた。
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