七月十二日 金曜日

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「あんたがウィルになっている間、自分の身体がどうなってるか、心配してたじゃないですか。それで見張っておいてあげたんです」 「え!? マジで? まさか一晩中!?」 「あぁ。おかげで寝不足」  言われてみれば、部屋着を着た静は何となく草臥れて見える。大きく口を開けてあくびをし、いかにも眠そうだ。  寝ているところを見られていたのかと思うと、少し気恥ずかしい。頭の隅に何か引っかかるものがあったが、そのことを深く考える前に、握っていた手を離して静が立ち上がった。 「せめてあんたが四つん這いになってニュアニャア鳴くところでも見られたら甲斐があったんですけど、残念ながらぐーすか平和に寝ているだけでした」 「そっか……ありがとう」  ウィルになっている間、夢遊病みたいに動き回っているわけじゃないと知ってほっとした。  口ではずいぶんな言い様だけど、静も本心ではきっと心配しているんだろう。安堵の息を漏らす直人を、切れ長の目でじっと見下ろしている。あんまりじろじろ見てくるから、ちょっと居心地が悪い。
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