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そう言われても、いまいちピンとこない。羨ましいくらい自立心の強い静にも、ぬくもりが恋しいときがあるのだろうか。
「お前って実は寂しがり屋だった?」
「いや、そうじゃなくて。ウィルって先輩と似ていると思いません? あの頃猫飼うつもりなんかなかったんですけど、あんまり似てるから連れて帰って来ちゃったんです」
「え? そうか?」
受け取りに行った郊外の家の温かい一室で、子猫たちは跳ね回って遊んでいた。どの子も可愛かったけど、直人は一目でクロが気に入った。艶やかな黒い毛並みに、しなやかな体躯。サファイア色の瞳は堂々として、ミステリアスにきらめいている。
その美しい黒猫が、いつも直人を守ってくれるやさしい友人に似ているからだと、すぐに気付いた。一緒に来てくれていた静にも、そう言って自慢した。だけど――……、
「おれ、ウィルみたいにふてぶてしくねぇだろ」
「何言ってるんですか。厚かましくて無神経なところ、瓜二つですよ」
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