七月十二日 金曜日

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 なるべく淡々と聞こえるように返事をしたけど、内心直人はうれしかった。自分に似ているから飼いたくなったと言われると、なんだかとても好かれている気がする。しかしそれ以上に照れ臭くもある。  最初に面と向かって本人にそう言ったのは直人の方だった。しかし、十にもならないこどもが言うのと、思春期もいいところの自分たちが言い合うのは、意味合いが大きく違うと思う。  どんなつもりでこんなことを言い出したのか、計りかねてこっそり静を覗き見る。しかし幼馴染は相変わらずの無表情で、何を考えているのかはまるで分からなかった。  気まずさを誤魔化すためにした質問で、余計に気まずくなってしまった。どうしたものかと焦っていたら、ちょうどいいタイミングで目覚ましのアラームが鳴った。 「あ、そろそろ準備しなきゃ」 「俺も、もう行きます」  ベッドから降りた直人と入れ替わるように静がベッドに上がり、窓枠に手を掛ける。微妙な空気になってしまったことに気づいていないのか、静は少しぼんやりとしている。一瞬振り返った幼馴染の黒い瞳は、逆光のせいかどこか陰って見えた。
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