七月十二日 金曜日

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 明日からは休みで、ようやくのんびり出来ると思っていたが、直人としてはいっぺんにそれどころではなくなった。帰宅した後、いつものように部屋に来てくれるのかと思っていた静は、一体何をしているのか、自室にこもったままだ。  夕食を食べ、風呂を終えて部屋に戻っても、一向に彼は現れない。特に約束なんてしてないけど、今夜は一晩中そばにいてくれるものだと思い込んでいたから、突き放されたような気分になった。 「おい、遠野! 遠野! 何してんの?」  窓越しに声を掛けても、聞こえていないのか返事をしてくれない。それでもめげずに呼び続けていると、直人の背後からニャア、と掠れた鳴き声がした。  振り返る瞬間、黒々としたシルエットが、直人の横を通り抜けた。 「クロ、」  窓枠から勢いよくジャンプして、隣家の窓枠に悠々と着地する。細い隙間に身を押し込むようにして、黒猫は灰色カーテンの向こう側に消えた。  間を置かず、重い物音と静の驚いた声が同時に上がる。 「う、わ、なんだ、クロか」  やはり、彼は自室にいたらしい。 「静!」  もう一度声を上げて呼びかけると、ほどなくして灰色のカーテンが開いた。
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