七月十二日 金曜日

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 ついあっけなくほだされそうになってしまったが、直人は首を振って抗った。今夜、自室で寝たくないのは、何も不安なせいだけじゃない。 「あのさ、よく考えたら、ウィルになるのって、いつもおれのベッドで寝てるときだろ。ひょっとして違う場所で寝れば、ウィルにはならないんじゃないかと思って」  子供だましみたいな理屈だとは自分でも思う。だけど、このまま手をこまねいて、何か取り返しのつかないことが起こるのをただ待っていることなんか出来ない。  直人の主張を聞いた静は苦虫を嚙み潰したような顔になった。 「……俺の母、今イギリスに居て、いないんです」 「うん? いまさらなんだよ、知ってるよ」 「で、父親も最近仕事が忙しいみたいで、多分今日は帰ってこない」 「それがなんだよ! 別におれ、気にしないぞ」  静はなんだかんだ理由をつけて、直人を部屋に入れまいとしている。幼馴染がひょっとしたら命の危機に瀕しているかもしれないのに、これほどかたくなに拒否する意味が分からない。まして静自身は実家のごとく直人の部屋に入り浸っているのに、だ。  直人の困惑を知ってか知らずか、静は苛立たしそうに首を振った。
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