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軽く手を振って断言するが、それを聞くなり優は苦虫を噛み潰したように口元をゆがめ、ノートに顔を伏せた。
篠塚も、ついさっきまでいっしょに話していたのに、知らん顔をしている。
「ん? どうした?」
いつの間にか室内に暗雲が立ち込めている。
不審に思って辺りを見回すと、部室の入り口付近に腕を組んだ静が立っていた。
「わ、びっくりした。遠野も来てたのか。そんなとこ突っ立ってないでさっさと入れよ」
「はい」
声をかければ素直にこちらに近づいてくる。その顔は相変わらずの無表情だけど、何となく少し怖い。いつも以上に目元に険がある。
「あれ? 何か遠野怒ってない?」
「あんたは……」
物言いたげにこちらを見下ろしてくる静は、どこか少し傷ついている風にもみえた。
だけど、そのことを直人が指摘するより先に、静は首を振って呆れたようにため息をついた。
「寄り道するなら一声掛けてください」
「なんで?」
心底不思議に思って首を傾げると、目の前に勢いよく腕を振り下ろされた。
「うぉおっ!?」
驚いてのけ反る。ドンッ、と大きな音を立てて机を叩いたのは、ペットボトルのジュースだった。
「差し入れ」
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