七月十二日 金曜日

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「え、いや、何で隠すんだよ。ダニエラが言ってた猫と話せる方法? だっけ? 試そうとしてくれてたんだろ? あ、ありがとな……?」  とにかく、この悪臭も異常な室温もどうにかした方がいい。何となく静がいつもよりよれっとしているように見えるのは、きっとこの暑さのせいもある。  二つある窓を大きく開くと生ぬるい夜風が通り抜け、ひとまず臭いは気にならなくなった。 「そ、それで、その、よく分かんないけどウィルと話せそう?」 「いや、それが、作業工程中、満月の光が要るらしくて……、早くても完成は八月になりそうです」 「満月……」  不愛想で生真面目な幼馴染の口から出てくるファンシーな説明にめまいがする。どちらかというと占いとか魔法とか、非科学的なことはバカにするタイプだったのに。自分のせいで幼馴染が妙なオカルトにハマってしまったらどうしよう、と別の不安が産まれてしまった。  思いがけない接触に浮かれている場合ではない。静のためにも、問題を解決せねば、と気を取り直して扉へ向かう。 「ち、ちょっと廊下に出てみるぞ」 「……あぁ」
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