七月十二日 金曜日

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「何でそんなに追い出そうとするんだよ!」  慌てて起き上がり静に詰め寄るが、幼馴染は相変わらず視線をそらしたままこちらを見てもくれない。 「俺そろそろ寝たいんですけど」 「だから一緒に寝ようよ」  あんまり拒否されると、悲しくなってくる。腕を掴んで強請ると、静は瞬時に赤くなった。 「な、なに、言ってるんだ。いいからもう、帰れ!」  眦を吊り上げた静が、直人の肩をぐいぐいと力任せに押し込んでくる。上背も筋肉の量もかなわない相手に力勝負で来られると勝ち目がない。  あっという間に、窓の前まで追いやられてしまった。 「でもまだ二時間経ってない!」 「金なんてほんとに取るわけないだろ。早く帰れ!」 「何でそんなにイヤがるんだよっ! そんなに迷惑かよ」  不愉快そうに眉間に皺を刻む幼馴染を睨みつける。寝不足でイライラしているのだろうと頭の端では思ったが、限界が近いのは直人も一緒だ。  毎朝起きる度に募っていく不安感は確実に直人の精神を摩耗させていた。そんな最中に降って湧いた、命の危機だ。そんなの、冷静でいられるわけがない。 「……今日は無理だ。明日なら平気だから」 「アイツか……」 「は?」
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