七月十二日 金曜日

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 初めてウィルになった日に見た出来事は、今終わった。二度目になったときも、三度目になったときの出来事も、もうすでに終わっている。 「じゃあ、ひょっとして、もうおれはウィルになることは、ない……?」  これまで頭を悩ませていた得体の知れない出来事に、とつぜん明確に説明がついた。安堵のあまりひざから崩れ落ちそうになる。  力の入らない足を叱咤して、ふらふらと静のベッドに近寄る。腰をかけて見上げると、目を見開いた静が直人を凝視していた。  驚愕に染まったままの静の顔を見て、つい先ほど直人の告げた一世一代の告白を思い出す。謎が解けたことが衝撃的すぎて、それどころじゃないような気もするが、こちらはこちらで差し迫った状態である。  呆然としていたのは、どれほどの時間だったのか。今や完全に表情を失くした静が、ゆっくりとこちらに近づいてくる。  ベッドに座る直人の前に立つと、片膝を床について目線を合わせ、口を開いた。 「俺のことが、好き? 本当に?」  じっと瞳をのぞきこまれ、カッと頬に熱が集まった。衝動的に告白してしまったから、告げた後の静の反応なんて考えたこともなかった。
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