七月十二日 金曜日

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 直人だって信じたい。だけど今までの数々の暴言やいじわるを思い出すと、とてもじゃないけど信じられない。  おそるおそる問いかけると、静はいつも見せる不機嫌な顔になった。至近距離で鋭い目つきが剣呑に眇められると、ぐっと迫力が増してかなり怖い。  控えめに言っても、好きだと言われた直後だとはとても思えない形相だ。 「どうしてそう思うんだ」 「だ、だって、イギリスに居たころの、やさしかった静のこと、知ってるから。最近お前、おれのこといじめてばっかじゃん」  仏頂面で詰問され、ますます萎縮してしまう。こういう態度だから直人が嫌われていると思い込んだって、責められないと思う。 「それは、だって直人、俺のこと全然恋愛対象として見てなかっただろ。どれだけアプローチしても、分かってるんだか分かってないんだかヘラヘラしてるし」 「アプローチっていうかさ、おれのこと好きってはっきり言えばよかったんだよ」  静は眉間に皺を寄せたまま薄い瞼を伏せた。いつもみたいに見下ろされるんじゃなくて、胸元で項垂れられると、怖くは見えない。寂しそうにも見えるその目元を指で撫でると、静は目を細めて苦笑した。
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