210人が本棚に入れています
本棚に追加
/165ページ
「……俺は日本に来てから、本当の直人を知ってびっくりしたけど。おとなしい子なのかと思ってたら、活発だし、言いたいことは臆せず言うし」
「出会ったころみたいに、お前の後ろに隠れてびくびくしているようなおれが好きだった？」
「好きになったのはきっとその頃からだけど、この気持ちが恋だと気づいたのは、素の直人を知ってからだよ」
額にかかる黒い髪を払ってやると、静は困ったように薄く微笑んだ。細めた目元にはっきりと浮かぶ濃い疲労に、改めて彼にどれほどの心配をかけていたのかを知る。
そうだ。優が言っていたじゃないか。静は今も昔もずっとやさしくて、直人を守ろうとしてくれている。ただ最近は、そのやさしさを昔のようにストレートに表現しなくなっただけだ。
「イギリスにいたころは直人、……気を悪くするなよ。あっちの女の子より、よっぽどおしとやか、っていうか。俺がそういう気になっちゃっても、ある程度仕方ないかな、って思ってたんだよ」
「そういう気？」
「だから、守ってあげたい、とか。かわいいな、とか」
「あぁ、そういう……」
最初のコメントを投稿しよう！