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「直人、」
静の唇がゆっくりと近づいてくる。
元々ほとんど距離がなかったから、くっついてしまうのは一瞬だった。
「ん、」
静とキスするのは二度目だけど、一度目はあんまり急すぎて、よく覚えていない。それを取り戻すみたいに、しばらく唇を触れ合わせたまま静は動こうとしなかった。
唇に灯るあたたかくてやわらかい感触で頭がいっぱいになる。唇を離してからもしばらくは胸がどきどきして、息が苦しかった。
「あ、お、おれ……」
かぁっと赤くなる頬を隠そうと俯くと、ぎゅっと抱きしめられた。
「かわいい」
耳から流し込まれる蜜に、脳みそまで溶けてしまいそうだ。
見つめ合っていると、静の黒い瞳がとろけていく。ぎゅう、と力いっぱい抱きしめられて、直人の胸に温かいものが広がった。
しばらく幸せに浸っていたら、不意に静が圧し掛かってきた。
「え?」
そのままズルズルと押し倒されて瞠目する。ベッドの上だから痛くはなかったけれど、これは、まさか……。
「おい、し、静?」
顔を覗き込むと、直人の上に覆いかぶさったまま、静はすやすやと寝息を立てていた。
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