七月十二日 金曜日

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 そういえば、昨夜静は一睡もせずに、見張りをしてくれたのだ。目を閉じていても精悍な寝顔は、疲労の色が濃い。 「あ、焦ったぁ……」  固い身体の下から何とか抜け出して、額に浮かんだ汗をぬぐう。静は半分足をベッドから投げ出したまま、深い眠りについていた。起こすのは忍びない。  今夜、静の父は帰ってこないと言っていた。玄関のカギを開けたままにはしておけないから、自室に戻るためには、窓から出入りするしかない。しかし行きに感じた恐怖を思うと、とてもじゃないけど一人で試す気にはならなかった。  しばし迷ってから、直人は汗で湿った短パンとTシャツを脱いだ。勝手に引き出しを開けて、部屋着と思われる服を取り出して着替える。本当は下着も替えたかったが、さすがに下着まで借りるのは抵抗があるので諦めた。  そこで、直人にも体力の限界がきた。  シャワーは明日の朝浴びることにして、扇風機とエアコンを付ける。窓は二つともしっかり締めた。ウィルもクロもこの家にいるのは確実だから、窓を開けておく必要はないだろう。  その代わりに、ドアは少し開けたまま、電気を消した。
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