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七月十三日 土曜日 エピローグ
翌朝、直人が目が覚めたとき、静はまだ隣で寝ていた。二匹の猫もベッドの隅で絡まり合ったまま、平和な寝顔を見せている。
見慣れないグレーのカーテンから差し込む光に照らされた幼馴染が、あまりにも恰好良すぎてちょっと引いた。寝乱れた髪さえ、何だかそれっぽく見えるのだからズルい。直人なんて、女子に受けの良いこの髪型を維持するため、毎日五分はかけてセットしているのに。
口をへの字に曲げかけたところで、ふと笑いが込み上げた。直人にとって静は好きな人でもあるけれど、同時に同じ男として憧れていることに変わりはない。昨日は勢いのまま告白してしまったが、新たに生まれた関係性だけでなく、変わらない気持ちだってあるのだ。
そんな当たり前のことに安堵して、直人はベッドから降りた。生成りのシーツの上で健やかな寝息を立てる一人と二匹をしり目に、静のかばんを無断で漁る。
「おぉーい! 静! 勝手に鍵借りてくぞ」
ほどなくして目的のものを見つけた直人は、一応、持ち主に声を掛けた。
「っは!? せ、先輩?」
幼馴染みは起き抜けに脅威の瞬発力を見せて、ベッドの上から飛び起きた。
「鍵かけたらポストの中に入れておくから、ちゃんと回収しろよー」
「えっ、は? 何で直人俺の服着てんの? 夢?」
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