七月十三日 土曜日 エピローグ

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 ひっきりなしに送られてくる後輩からのメッセージに苛々して、携帯電話をベッドの上に放り投げる。すると、例によって直人の部屋に入り浸っていた静が、直人の携帯を拾い上げた。 「俺は、篠塚が俺たちの関係を誤解していることに、気づいていましたけど」  やたら顔のいい幼馴染はつまらなそうな顔で、画面に表示されたままの履歴を眺めている。 「マジで?!」 「バスケ部の半分くらいは、多分誤解してますよ」 「何で否定しといてくれなかったんだよ……」  恨みがましく睨みつけると、静は眉間に皺を寄せた。呆れたようにため息をついて、携帯電話を元の場所に置くと、手にしていた冊子に視線を戻す。 「俺にとって、都合がいいから」 「え? あぁ、そうか……」  なるほど、こういうところが鈍感って言われる理由なのか。少し反省しつつ、直人は静の横に座りなおした。  静はさっきからフローリングに座り込んで、直人の母が作成したイギリス時代のアルバムを眺めている。  静が熱心に見つめる先には、子猫時代のウィルがいた。今よりもっと小さくて、吹けば飛びそうに頼りない。 「静ってほんと、ウィルが好きだよな」
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