七月十三日 土曜日 エピローグ

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 掠れた声で名を呼ぶと、その声すら閉じ込めるように口づけられた。ほんの数日前までは、静のことが好きだという自覚すらなかったのに、こうしてキスをされると、こわばっていた心が解けていく。抱き合うだけで、やさしい気持ちで満たされる。  この事件を通して、変わった関係と、変わらない友情と。どちらも直人にとっては手放せない、大切なものだ。  人騒がせな隣家の飼い猫に感謝しつつ、もっと深く静の体温を受け入れるために唇を開く。  終わりよければすべてよし、とは、静と出会った彼の国のことわざだったか。腕の中のウィルが呆れて暴れ始めるまで、恋人となったばかりのふたりは、夢中になって口づけを交わした。 (おわり)
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