七月九日 火曜日

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 篠塚がぼやきたくなる気持ちは十分に分かる。  むしろ、すぐそばで育った直人だからこそ、出来のよすぎる幼馴染みを持った苦労は身に染みている。 「バイリンガルじゃなくて、マルチリンガル。あいつ四ヶ国語しゃべるよ。おれ、英語だけでもすっげぇたいへんだったのに。ほんと不公平。遠野の弱点知りたいよなぁ」  心から同意しつつ篠塚をみやると、後輩はなんとも言えない変な顔をしていた。 「……それはオレでも知ってる気がします。多分ですね、このまま話していれば勝手に向こうから、」 「おい、いつまで無駄口叩いてるんだ。勉強するんじゃなかったのか」  不意に背後から割り込んだ冷たい声に、直人はびくりと肩をこわばらせた。  恐る恐る振り返ると、眉間に皺をよせた静が腰に手を当てて見下ろしている。機嫌の悪そうな様子に直人は怯んだが、篠塚は堂々としたものだ。 「おー、いいところに。英語で分からないところあってさ。橋本先輩が得意だって聞いたから、教えてもらってたんだよ」  飄々と答え、へらへらと笑っている。  静は目を細めて舌打ちすると、クラスメイトから教科書をぶんどった。 「貸せ。俺が教えてやる」
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