七月九日 火曜日

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 そういえば、どうして静は直人にいじわるばかり言うようになってしまったのだろう。  今さらながら不意に浮かんだ疑問は、向かいに座る少年のため息にかき消された。 「……先輩って本当に俺の顔だけは好きですよね」 「バカやろう! その身長だって喉から手が出るくらい羨ましいと思ってるし、お前みたいな筋肉質な身体もなれるもんならなりてぇよ!」  力説すると、持たざる者の苦労を知らないはずの静はなぜか疲れた顔になった。  ここで全く謙遜せず、ましてや得意げにすらならないところがこの幼馴染みの憎らしいところだ。こうも面と向かって羨ましいといわれているのだから、多少なりともうれしそうな顔を見せたらまだかわいげがあるのに。心の底からどうでもよさそうにウィルを撫でているから腹が立つ。 「……先輩の理想の子ってどんなひとなんですか?」 「おっぱいが大きくてポニーテールが似合う子」  ついでみたいに訊いてきたから、よく考えずに即答すると、静はあからさまに軽蔑した顔になった。静だって、自分の好みにはしっかりかわいい子がいいと公言したくせに、直人が言うのは気に入らないらしい。
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