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(なんだ? これ、動物!?)
体中ふさふさの茶色の毛に覆われ、丸っこい手には鋭い爪までついている。それがよく親しんだ隣家の飼い猫、ウィルのものであることは、すぐに気がついた。
(おれ、ウィルになっちゃった!?)
ということは、ここは静の住む隣の家か。
そう気づいて辺りを見回す。灯りはついておらず薄暗いものの、そこは昔自宅のように行き来していた隣家の二階の廊下だった。
自分でも信じられなかったが、何度瞬きしても元の身体には戻らない。
とにかく静にこの窮状を訴えて、助けを求めなければ。
思うように動かない手足を何とか引きずって静の部屋の前まで進む。静の部屋の扉はわずかに開いていた。先ほど眩しいと感じたのは、このドアが開いたからかも知れない。
もたもた前足を動かしていると、部屋の中から話し声が聞こえ、首をかしげる。
いくら直人が寝たのが早かったとはいえ、それでも午後十時近かったと思う。まさかこんな夜遅くに尋ねてくるひとなんているだろうか。
聞こえてくるのは低く心地よい静の声と、直人が聞いたこともない男の声だった。それも、何だか言い争っているような不穏なトーンだ。
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