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七月十日 水曜日
「うわぁっ!!」
悲鳴をあげて飛び起きると、そこは見慣れた自分の部屋だった。
紺色のカーテンの隙間から、眩しい太陽の光が差し込んでいる。枕元に置かれた携帯電話が目覚まし代わりにセットしたアラームを鳴らしていた。
「……朝? 夢……?」
しつこく鳴り響くアラームを止めて、携帯電話を握り締めたまま呆然と呟く。ほんのついさっきまで夜中だったはずなのに、瞬きする間にいつの間にか朝になっていた。
じゃあ、直人がウィルになってしまったというのは、夢だったのだろうか。
「夢なんかじゃない……」
肉球ごしに伝わった冷たい床の感触。驚いたときに尻尾の毛が逆立った感覚なんて、どうして想像だけであんなにリアルに再現出来る?
全て夢だった、で済ませるにはあまりにも直人の経験した全ては鮮明すぎた。いまだ心臓がどきどきと忙しなく脈拍を刻み、惑乱から抜け出せない。
「先輩っ!」
そのとき、突然がらりと窓が開いて部屋着のままの静が部屋に飛び込んできた。
猫や静が出入りしている窓は、直人の寝ているベッドの真横にある。窓枠から飛び降りた静に踏まれることこそなかったが、覆いかぶさるようにして肩を掴まれ、息が詰まった。
「先輩の悲鳴が聞こえたから……どうしたんですか?」
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