七月十日 水曜日

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 少し恥ずかしくなって、肩を押して距離を取ろうとすると、静は不思議そうに直人の目を覗き込んでくる。  静が無駄にイケメンなせいで、至近距離で目が合うと不必要に照れくさくて困る。認めるのは悔しいけど、静の言う通り彼の顔はすごく好みなんだと思う。惜しむらくはこの顔がついているのが自分じゃないということだ。 「静……あのさ、驚かないで聞いて欲しいんだけど」 「うん」  さきほどとは違う意味で早くなり始めた鼓動に気づかないふりをして、おずおずと切り出した。  静は真面目な顔で直人が口を開くのを待ってくれている。 「おれ、昨日の夜、ウィルになっちゃったんだ」 「…………は?」  自分でも荒唐無稽なことを言い出したのは分かっている。だけど他に言いようがない。 「だからさ、昨日おれすぐ寝ちゃっただろ?」 「……はぁ」 「で、その後、おれウィルになって、お前の部屋の前にいたんだ」  しばらく室内に沈黙が落ちた。  不意にベッドの足元で何かがごそごそと動く。ブランケットの下から出てきたのは眠たげなクロだった。
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