七月十日 水曜日

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 大きく背中をそらして伸びると、直人の手に擦り寄る。滑らかな毛皮は熱いぐらいだけど、触れているとやっぱりちょっと安心した。  しばらく静は黒猫を撫でる直人の手元を見ながら考え込んでいたが、やがて慎重に尋ねてきた。 「寝た後に」 「そう」 「それって夢をみたってことですよね?」 「違うって。夢じゃない」 「どうしてそう思うんですか?」 「だってすごくリアリティあったし」 「…………」  直人はクロをあやす手を止めて、困惑顔の幼馴染みをじっと見据えた。  静との付き合いは、八歳でイギリスに移住してからだから、八年ほどになる。さすがに直人がこんな突拍子もないことを理由もなく言うはずないことくらいは、静だって理解しているはずだ。  何と言えば良いのか、応えあぐねている静に、直人の方からもっとも言い出しにくいことを切り出すことにした。 「でさ、あのさ、言いにくいんだけどさ」 「……はぁ」 「お前、昨夜、何かその、……男に告白されてたよな?」 「はぁ!?」  おっかなびっくり尋ねてみると、静は思い切り眉を顰めた。  ワントーン上がった声量に、驚いたクロはさっと部屋から走り去る。
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