七月十日 水曜日

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 一年生の教室が並ぶ廊下に、二年生が来ることはあまりない。じろじろと不躾な視線を感じ、少々居心地が悪い。  つい長身の静の背中にかくれるようにしてしまい、静に笑われてしまった。 「そうしてると、イギリスに居たころみたいですね」 「……どうせあの頃からお前はデカくて、おれはちびだったよ」  静は直人をからかうことで、ようやく機嫌を直したらしい。少し目元を緩めてくれたことに安堵しつつ、静の周囲を観察する。  しかし、よく考えてみたら静は元々高身長のイケメンだ。性格だって、直人に対してはアレだが、裏表なく責任感の強い静に悪印象を持つことは難しいだろう。  ただ廊下を歩いているだけなのに、誰もが好意を持っているように見えてしまい、我ながらどうしようもない。 「遠野、今すれ違ったひとって接点ある?」 「委員会がいっしょです」 「さっき挨拶してきた日焼けした子は?」 「元々同じ中学でした」  半ば疑心暗鬼になりつつ、油断なく目を配っていると、不意に静が低い声を出した。 「……先輩、ちょっと目ぇつぶしてもいいですか?」 「何その犯行予告!? いいわけあるか!」
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