七月十日 水曜日

10/40

210人が本棚に入れています
本棚に追加
/165ページ
 突然ぶっそうなことを言い出した幼馴染みに、ぎょっとして身を引く。  いつの間にか直人のあずかり知らぬところで、また機嫌を悪くしたらしい。これほど扱いが面倒な男は、自分の取り扱い説明書を作っておでこにでも貼っておいた方がお互いのためだと思う。 「まぁさすがに冗談ですけど。さっきから俺の顔ちらりとも見ないくせに、他所の男ばっかりじろじろ見てるのって何かのあてつけですか?」  しかも、その理由が自分を見ないからとか、どこのわがままな子どもだ。 「お前、おれが何のためにここに来たかわかってないの? お前の顔なんか、今朝もベッドの上で飽きるほど見たっつーの……あ、篠塚」  軽口を言い合いながら歩いていたら、見覚えのある後姿を発見した。  声をかけると後輩はなぜかとても嫌そうに振り返った。見つかりたくなかったら、無駄に高い身長を削るべきだと主張したい。そして五センチでいいから分けて欲しいというのが本音だけど、さすがにそれは先輩の沽券に関わるので言えない。 「おはようございます。……朝からディープな会話してますね」 「おはよう。ちょうど良いところにいた。ちょっと訊きたいことがあるんだけど」
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

210人が本棚に入れています
本棚に追加