七月十日 水曜日

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 腕時計を確認すると、そろそろ予鈴の鳴る時刻だ。あまり時間もないことだし、気を取り直して篠塚に向き合った。 「あのさ、突然なんだけど、遠野のこと好きそうなやつ、このクラスにいるか教えてくれる?」 「……藪から棒に何なんですか。しかもそれ、俺が答えて大丈夫な質問ですかね?」  篠塚は直人からも静からも目をそらして、困った顔で頭をかいている。  まぁ、自分でも不躾な質問をしたと思う。はぐらかそうとする篠塚は、やっぱり友達想いのいいやつなんだろう。  場違いな感想を抱きながら、それでも気づいた事実を指摘する。 「それってつまり居るってことだよな。あぁ、でもおれが訊きたいのは女の子じゃなくて、男なんだけど」 「はぁ!?」 「だから、遠野のことを恋愛感情として好きな男がいないかを訊いてるんだけど」  分かりやすく端的に問いを重ねると、篠塚は怪訝そうに直人を見下ろした。 「……何がどうこじれたらそうなるんですかね」 「だって遠野がおれの言うこと、全然信じてくれないから」  篠塚が不審に思うのも無理はない。分かってはいるが、詳細に事情を説明するのは憚られた。
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