七月十日 水曜日

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 だって、猫になってしまったことを、静にすら信じてもらえなかったのだ。篠塚は気のいいやつだとは思うけど、とてもじゃないけどまともに取り合ってもらえる気がしない。  言いたいことは山ほどあったが、迷った末に口ごもってうつむく。  それでもかたくなな直人の態度に、何らかの深刻なものは感じ取ったらしい。からかうような態度を改めて、篠塚は腕を組んで直人に向き直った。 「えぇと、コイツが浮気でもしました?」 「浮気!? 遠野って彼女いるの!? いつの間に!?」  びっくりしてつい大きな声が出てしまった。廊下中に響いたその声に、しまった、とは思ったがもう遅い。複数人の生徒が好奇心丸出しの顔をこちらに向けている。  でも、家にいるときも学校にいるときも、静は最近それこそ四六時中直人のそばにいるような気がするけど。その上どうやって彼女と付き合う時間なんてひねりだせるんだろう。不思議でしょうがない。 「水臭いな、教えろよ!」  後ろに立つ静を振り返って笑いかけると、静はびっくりするぐらい無表情になっていた。
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