七月十日 水曜日

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 その後もしばらく粘ったが結局なんの成果もなく、予鈴に追い立てられるようにして静の教室を後にした。  ある日突然猫になる、という一大事が起きた後でも、普通にテストはあるし、放課後もやってくる。  しかし昨晩の出来事が衝撃的過ぎて、テストに集中なんて出来るはずがない。  さすがにこれはやばいかもしれない、と筆記用具を片付けながら落ち込む直人に、何も知らない優が明るく声をかけてきた。 「直人、今日も部室で勉強していくでしょ?」 「うーん……どうしようかなぁ」  勉強はしていった方がいいに決まっている。でも、今この瞬間にでもウィルになってしまうのではないかと思うと不安で落ち着かない。  それにおそらく静に告白してきた男は、この後部室に集まるメンバーの中にはいない。部員であれば、きっとすぐに声で分かったはずだからだ。  だけど、どうやって静を好きなやつを見つければいいんだろう。  迷っていると、後ろから強い力で腕を掴まれた。 「帰りましょう」  驚いて振り返ると、スクールバッグを肩にかけた静が、無表情で直人を見下ろしていた。
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