七月十日 水曜日

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 ちなみに、繰り返すようだがここは二年の教室である。違う学年、まして先輩のクラスなのに、この面の皮の厚さは羨ましいぐらいだ。 「なんでお前が決めるんだよ」  本当は端から行く気などなかったが、勝手に決められるのは面白くない。やっぱり部室へ向かおうかと翻意しかかったところで、静は不機嫌そうに口を開いた。 「だって先輩、またじろじろ俺の周りの男を見るんでしょ」 「それはお前がつまんない嘘なんかつくからだろ」  不貞腐れて睨みつけると、静はいかにも面倒くさそうにため息を吐いた。机の横に掛かっていた直人のかばんを取り上げると、強引に手を引いて歩き出す。 「まだそれ言い張るんですか? 誰にも告白なんかされてませんって。勉強はうちに帰ってしましょう。分からないとこあったら教えてあげますから」 「何で一年のお前が二年の俺を教えられるんだよ……」  しかし悔しいことに彼は本当に直人に勉強を教えることが出来る上、教え方は先生より分かりやすい。  どうしたものか決めかねて優を振り返ると、薄情にも友人はすでに荷物をまとめて教室の出口へと向かっていた。 「え? 優、いくらなんでも見捨てるの早すぎない?」
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