七月十日 水曜日

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「察しのいい友達でよかったですね。さぁ、行きましょう」  押しの強い静に口で勝てるはずもなく、半ば引き摺られるようにして教室を出た。  歩いているだけで汗がにじんでくる夏空の下を、無言で歩いてバス停へ向かう。幸い、そう待つことなく目的のバスが来た。  乗り込んだバスはがらんとしていて、座る場所はたくさんあった。二人掛けの席の奥に座ると、静は当たり前のような顔をして横に座ってくる。いつも通りの仏頂面だが、見た目ほど機嫌は悪くないらしい。 「あーあ、テスト全然出来なかった。だっておれ昨日の夜猫になったんだよ。もうテストどころじゃないって」  ぼやきながら肩にもたれかかった途端、大げさに身体を震わせた静に振り払われた。座席に手をついて何とか持ちこたえる。 「な、何だよいきなり」  静はなぜか恨めしげな目つきでこちらを見下ろしている。  今のやりとりのどこに怒るポイントがあったというのか。つくづく幼馴染みの沸点が分からない。 「何だよ」  睨みつけても、珍しく静は何も言い返してこない。  苦い顔で前に向き直ると、カバンから取り出した携帯電話を弄り始めた。
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