七月十日 水曜日

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「テストが出来ないことに対する言い訳としてはずいぶんと壮大ですね」 「言い訳じゃないから! ほんとだから!」  静は全く信じる気がないし、直人も自分の体験したことを夢だったと認めるつもりはない。話は堂々巡りだ。  落ち込む直人の心とは裏腹に、バスは青空の下を軽快に走る。交差点を後二つ渡れば、自宅はもう目と鼻の先だ。 「……お前が信じてくれなかったら、誰に相談しろっていうんだよ」  こんなばかげた話、他の友達にも、まして親になんて言えるはずない。  弱気になって口を尖らせると、静はようやくまともに取り合う気になってくれたらしい。 「……分かりました。ちゃんと話聞いてあげますよ」  そう宣言して、立ち上がった。 「えっ?」  まだ最寄りのバス停にはついていない。慌てて後を追う。  降りた場所は、家からいちばん近いコンビニの前だった。 「話聞くのに、何でここで降りるわけ?」 「仕方ないからお礼はアイスでいいです」 「それお前がアイス食べたいだけじゃない……?」  まったく悪びれる気配のない後輩を追いかけてコンビニに入る。
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