七月十日 水曜日

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 貴重な静の笑顔がこんなことで浪費されるのは惜しい。つい見とれてしまったが、やさしそうな笑顔から出てきた言葉はいつも通り非道だった。 「そりゃあ動画で撮って永久に保存しますよ」 「お前鬼だろ」  あながち冗談だとも思えない返答に、直人は真顔になった。  全く真面目に取り合ってくれてない。やっぱり静に告白してきた男を見つけ出して突きつけでもしない限り、信じてくれないのだろうか。  落胆し、棒アイスを齧りながら、目の前に広がるのどかな光景に思いを馳せる。口の中に広がるラムネ味は、少しだけノスタルジックな気分を連れてきた。  ここはふたりの家からいちばん近い公園で、小学生のころ……特に帰国したばかりのころ、よくここでいっしょに遊んだ。  あの頃から静は頼りがいがあって格好良かったけど、まさか男にまでモテるようになるなんて、誰が想像出来ただろう。 「あのさ、遠野は男に告白されたらどう思う? やっぱいやだろ?」  少しだけ声のトーンを変えて真剣に尋ねてみる。
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