七月十日 水曜日

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 またバカにされるかもしれないと覚悟していたけど、こっそり覗き見た静の黒々とした瞳に茶化す色はない。それどころか普段直人の話をおざなりに聞く彼が、なぜかきちんと向き合ってくれた。 「……相手によりますね」  じっと直人の目を見つめて囁くような声で言われると、簡単に心拍数が上がってしまう。まるで静のほうこそ、何か大切なことを告白しているみたいだ。 「どうしてそんなこと訊くんですか?」  その上直人には滅多に聞かせてもらえないおだやかな声でうながされると、頬に熱が集まってくる。何だか恥ずかしくなってきて、目をそらし、言い訳みたいに早口で言い募った。 「だって、おれ、ウィルになったときに、遠野が誰か男に告白されてるところ、見ただろ? お前が夜中に部屋に入れるくらい信頼してる友達からいきなり告られたら、ショック受けてるんじゃないかと思って……」 「へぇ、そうですか」  大真面目に言ったのに、静は急に興味をなくしたようだった。  食べ終わったアイスのカップを袋に突っ込んで、帰り支度を始めている。 「おい、おれは真剣に遠野を心配してるんだぞ」 「それはどうも」
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